ヤドリギをご存じでしょうか。鎮守の森などの樹上で鳥の巣のような球状の塊を作る植物です。木に寄生して、栄養を奪いながら生長するので、寄生した木を弱らせ、時には落枝などの事故を起こすことがあります。
このヤドリギは果実を鳥が食べることで広がります。種子は果実の内部に詰まった粘液に守られているため、鳥の消化器官を通り抜け、糞とともに排出されます。そのうち樹上に落ちて貼り付いた種子が発芽して根を下ろし、栄養を奪い始めるのです。つまり、とても生き残り戦術に長けた植物と言えます。
かつてヤドリギは、鳥や昆虫を捕まえる“鳥もち”などに使われていました。しかし、鳥獣保護法で使用が禁止された今では使われなくなり、採取できる人も減ったため、ヤドリギが寄生した危険な木が増えてしまいました。
この状況に危機感を抱いたNPO法人森林風致計画研究所(長野県松本市)が、昨年、「ヤドリギプロジェクト」を立ち上げました。樹木医の資格を持つ樹木専門の職人たちが、ロープを使って樹上を自由自在に移動しながら、ヤドリギの採取を含めた樹勢回復作業を行います。その費用の一部を、採取したヤドリギの販売収益でまかなう仕組みです。実はヤドリギ、リースなどの花材としてとても人気が高いのです。
この取り組みを多くの方に知っていただきたいと思い、今年の採取風景を動画で記録しました。下記のアドレスを入力すればYouTubeの動画ページにリンクしますので、ぜひご覧ください。
(2015年1月 中越パルプ工業社内報kami-cocoro 里山マイスターの「里山通信」vol.20を転載)