梅雨明けが近づき、本格的な夏へのカウントダウンが始まりました。夏は里山が最も多くの生きものでにぎわう季節です。中でも目を引くのが大型の蝶たち。国蝶に指定されていて、6月~7月にしか見られないオオムラサキや、黄色と黒の翅が美しいキアゲハなど、多くの蝶が舞います。
今回は数多い蝶の中から、アサギマダラをご紹介しましょう。
名前の通りに浅黄色(淡い青緑色)をベースとした、ステンドグラスのような美しい翅を持つ蝶です。もともと人をあまり恐れないチョウなのですが、フジバカマやヒヨドリバナなどの蜜を吸っている時は、かなり近寄って観察することができます。夏は比較的標高が高いところで見かけ、秋は太平洋側などの暖かい地域で見かけます。
実はこの蝶、日本国内で見られる蝶のうち、唯一、長距離の「渡り」をする蝶なのです。1980年代から、捕獲したアサギマダラの翅に捕獲場所や日付、連絡先などを書き込んだ後に放蝶するマーキング調査が始まりました。その結果、長距離移動の実態が少しずつわかってきたのです。移動ルートについては、暖かい地域で羽化した個体が、春から夏にかけて涼しい地域に渡ることや、涼しい地域で羽化した個体が、夏の終わりから秋にかけて暖かい地域に移動することなどがわかってきました。中には海を越えて、台湾にまで移動する個体も見つかっているそうです。
皆さんがお住まいの町や、休日に訪れる旅行先などでも、旅の途中に立ち寄ったアサギマダラと出会えるかもしれませんね。
(2014年7月 中越パルプ工業社内報kami-cocoro 里山マイスターの「里山通信」vol.18を転載)